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ナム・ジュン・パイク

ものすごく昔の話。
僕が大学生だった頃、卒業制作費を捻出するためにTad、☆君の2人とアルバイトをする事になった。恩師のお手伝いを兼ねて、ワタリウム美術館でNam June Paikの企画展の会場作りを手伝うバイトだったんだけ、とにかく過酷だった。

どう過酷かというと昼夜を問わず働いて、昼夜を問わない時給だったから肉体的、金銭的に過酷だった。けど徹夜明けにワタリウムの若旦那様のお宅でいただいたビールは、未だに忘れられないほど、未曾有に旨いビールだったな。それはそう、まるで未来のお菓子を食べたのび太並の感激だったと思う。
100nengo-okashi.jpg

しかもそのビールは当時美食家の間では蔑まされていた、スーパードライだったんだから驚きだ。でも美味しんぼの山岡だって、僕等と一緒に昼夜を問わず過酷に働いてスーパードライを飲んだら、きっとのび太のように感激したに違いない、間違いない。
dry-beer-yamaoka.jpg

そんなことはさておき仕事の話。
徹夜を繰り返して一体何をしていたかというと、基本的にはひたすらモニターを積み上げてたんだよね。モニターを積み上げて何を作っていたかというと、ナム・ジュン・パイク氏のインスタレーションを作ってたんですよ。 ただ現場には当のパイク氏はおらず、恩師号令の下僕らが作業をしていて、その号令を出している恩師の手に握られているのは、パイク氏が描いたという、どう見てもイタズラ書き程度のラフすぎるラフだった訳で。。。

さすがに「パイクってばいい加減だなあ、全部他人まかせじゃん、、ずいぶん大物こいてんなぁ、」などと悪態をついていたら、恩師が「パイクは自分のイメージが人手を介してどう変質するか、どう具現化するかを見てるんだよ、捨てる作業だよ。そして僕らも彼のコンセプトの一部なんだよ」ともっともらしい事を言って一人納得していたが、今考えてみると、恩師は当時パイク氏のマインドコントロール下にあったんじゃないかと思う。

その恩師はパイクとは古い付き合いで、何度か一緒に仕事をしていたらしく「先生(パイク氏)と、何ヶ月もスタジオに篭って編集したよお、一種のプリコラージュかな、、ストロースだよ、種の起源。 結局メディアは時間なんだよね。」などと理解出来ない芸術論満載の思い出話をしていたにも関わらず、企画展の1日前にフラっと現れたパイク氏が恩師にまるで気が付かず、素通りされてたのは痛かったな ('-'*)。


pike_signature.jpg

ででその昼夜を問わない時給を補填する形でいだいたのが、この本であります。企画展の1日目が終わった頃だったかな、、ワタリウムの御子息に呼ばれてパイク氏に引き合わされたんですよ。したら激しくつたない日本語で感謝の言葉をいただいた後、「ドローイングしようかな、名前は?」なんて言いだして、☆君、Tad、僕のそれぞれの名前と、この絵を裏表紙に描いてくれたんだよね。

正直疲れきってた僕らは「(゚Д゚)ハァ」てな感じだったんだけど、その様子を見たワタリウム関係者が「先生が絵をお描きになるなんて、珍しいのよお」、「やったな名前入りだぞ、いいな~」などと下手なサクラまがいの賛辞をならべて無理やりハッピーな大団円を演出していた。けど僕は疲れてただけで内心は結構嬉しかったんだよね。そんな訳でこの本は未だに僕の宝物でっす。いいでしょ。

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コメント (4)

tad:

僕も“本”は宝物です。

あの年も都内はひどく蒸し暑くてね。毎日、はしゃいで景気づけしてないとやってらなかったのを憶えてる。

そのビールの話は当時もすごく悔しかったよ。僕は、自分の家で寝る事の代償にそんな素敵な思い出を体験できなかったってことなんだわな。う~ん。


絵文字使いすぎ。

92:

あのビールは本当に美味しかった。 まぁ「お腹がすいていれば何でも美味しいね」という忘れがちな大原則ですよね。ところでKO-1さん元気かな、オーナー御夫婦やお姉さまはアレだけれども、KO-1さんは好きだったなぁ。

I take this flash media for personal use. Thanks. ;-)

はじめまして。
パイクが亡くなってしまって、検索して記事を読ませていただきました。あのインスタレーションを建てるについては、いろいろ大変だったのですね。おどろきました。

追伸。
2006.restartのセルフポートレート、いいですね。

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2004年07月07日 12:09に投稿されたエントリーのページです。

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